──目が覚めると、一面が白い天井で覆われていた。



私・・・どうしたんだっけ・・・?



そんなことを考えながら体を起こすと、ガラッと扉が開いた。



「あぁ、起きたか」



中に入ってきたのは保健の先生である真琴先生みたいだ。



起き上がった私の姿を見て、少し安堵したようにため息をつく。



「先生、私・・・」



「体育の最中にぶっ倒れたんだよ。二海が慌てて運んできたぞ。後で礼言っとけよ」



「え・・・二海が・・・?」



驚きだ。



まさか二海が私の事運んでくれてたなんて・・・。



やっぱ、不器用なだけでちょっとは優しいところあるんじゃん。



「ま、わかってっと思うけど、あいつなりの優しさだ。背は一丁前にでっかいくせにそーゆーとこ成長しねぇからな、アイツは」



頭をかきながら誤解がないようにと補足してくれる真琴先生。



「アイツ、会う度に罵詈雑言だらけだし、その言い方はすごく腹立ちますけど・・・二海が優しいってことは、ちょっとは理解してるんで大丈夫です」



「・・・そーかい」



私の発した言葉に、真琴先生の目が優しく細められる。



「なら、心配はいらねーかな」



そう言って、先生はいつも座っている椅子へと腰掛ける。



「今日は早退しろ。さすがに昨日みたいな“保健室駆け込んでおいて部活までちゃっかり参加しました”なんてさせねーからな」



「ぅ・・・わかってますって・・・」



さすがに今回は具合が具合だ、部活をやれるだけの余力は持ち合わせていない。



どう足掻いてもお荷物になるのが関の山だ。



「わかってるなら上々。荷物は二海に持ってきてもらうよう言ってあるから、横になって休んでな」



「え、二海に?」



「隣の席だろ?ちょうどいいかと思ってよ」



いや、確かに隣の席だけど。



そこ、普通女の子に頼まない?



まぁ別にいいけど。



「それにしても、よくこんなフラフラな状態で電車使って学校来れたもんだわ、立ってるのだってしんどいだろ」



「二海が席譲ってくれたんで」



「!・・・へぇ・・・」



真琴先生は、私の返答にピクリと反応したあと、含みのある笑みを浮かべた。



「なんだ、ちゃんと動いてるじゃん」



「なにがです?」



「いや、こっちの話」



真琴先生の言葉に意味がわからなくなりハテナを浮かべていると、再び扉が開いた。



「真琴、辻本の荷物もってきたぞ」



「あぁ、サンキューな」



片手に抱えてきた私のリュックを机の上に置き、私の元へと歩み寄って来る二海。



え、なに?



「どうせ、雑食ゴリラだから変なもの食って食あたりでもしたんだろ?ほら・・・あったけぇ飲み物やるから、腹、冷やすなよ」



そう言って差し出されたのは、あったかい紅茶のペットボトル。



玄関近くの自販機に売ってるやつだ。



わざわざ買ってきてくれたのかな?



「あ、ありがとう──って、誰が雑食ゴリラなわけ!?」



保健室まで運んでくれて、荷物も持ってきてくれて・・・紅茶まで。



優しいと思った矢先、雑食ゴリラっていう新ディス来ましたよ。



私、ゴリラらしいことしてないと思うんですけど!?



「あー、はいはいドラミングはよそでやってくださーい」



「誰がするか!」



寝て体力が回復したのか、言い争いはできるまでになってきたようだ。



二海の言葉に次から次へとツッコミを入れる。



だけど、二海はクルッと踵を返して保健室を立ち去っていく。



アイツ・・・なにがしたかったんだ?