──部活終了後、私は帰宅するために荷物を整理する。
いつもは迎えに来てもらうけど、今日は難しいと言われてしまったから電車で帰ることになったのだ。
「じゃあ、お疲れ様。私先に帰るね」
「うん、由紀もお疲れ様。じゃーね」
お迎えが来た由紀は、私より一足先に帰るようだ。
荷物を持って部室をあとにする由紀に、手を振って見送る。
その姿が見えなくなったあと、私も荷物を背負い、部室を後にしようとする。
その時、隣の部室から荷物を背負った二海が後ろ向きで挨拶をしたあと出てきた。
「あ、二海」
「ん?・・・あぁ、辻本か。お前も電車?」
荷物を背負って歩き出そうとしている二海に声をかけると、ワンテンポ遅れながら私の事を認識したようだ。
左手を気にするような仕草をしながら、私に視線を向ける。
「うん、そうだけど・・・アンタ、結局あの後ガッツリ練習してたけど・・・大丈夫なの?左手」
私はずっと気になっていたことを二海に伝える。
痩せ我慢してた、とかってなったら大変だもん。
それじゃなくても、茂木先輩がこいつの場合自分からは言わないって言ってたしな。
「言ったろ、“違和感あるだけだ”って。心配しなくてもなんともねーよ」
私の隣に並んで歩きながらなんでもないと言わんばかりに左手をプラプラとさせる二海。
「てか、そんなに心配されると気持ちわりぃ」
おえ・・・と、えずくような動作をしたあと、気持ち悪いとはっきり言い放つ二海。
その言葉を聞いて、私はカチンときた。
「はぁ!?人が心配してやってんのに・・・!!」
「別に心配されなくても平気ですぅ。つーか、毎朝俺に突進してくるのを何とかして欲しいんだけど?」
「だから!!それは電車が揺れるんだから仕方ないでしょって!!」
駅に向かいながらそんなことを話していると、ぐぅー・・・と私のお腹が鳴り響く。
しまった、と思ってお腹を抑えるけど、もう鳴ってしまった音は消えることはなく・・・。
「ブフッ・・・アハハハ。デッケェ音」
お腹の音を聞いた二海が、思いっきり笑い始める。
その言葉で、恥ずかしさのあまりにかあぁっと頬に熱を持っていく。
「お、お昼食べ損ねたんだから仕方ないでしょ・・・!」
「クククッ・・・あー、ハイハイ、そーでしたねっ」
笑いを堪えながら、返事をする二海。
その姿ですら、恥ずかしさでフツフツと怒りが沸きあがる。
「そんなに笑わなくてもいいじゃん!!」
その後、駅までの道のりも笑われ続けた。
ほんっとに最悪、性格悪すぎでしょ、二海のやつ。



