ボトルを作り、タオルを配る・・・そんな仕事をこなしながら、皆の練習風景を見る。
そんな中、私は少しの違和感を見つけた。
二海だ。
よくよく見ると少しだけ、左手を庇っているように見える。
最初は気のせいかな、なんて思ってたんだけど、やっぱり昨日の動きとは何か違う。
やっぱり、私庇った時に痛めたのかな・・・。
「あー、あちぃ〜・・・。なぁ、ボトルのおかわり作ってくんね?」
服で顔の汗を拭きながら、ベンチに置いていたボトルを差し出す。
全部、右手で。
「いいけど・・・左手、痛いなら茂木先輩に言いなよ。心配だし」
「っ・・・なん・・・!?」
ボトルを受け取りながら二海になんの気なく話すと、驚いたように目を丸くして言葉を詰まらせた。
やっぱり・・・痛かったんじゃん。
「・・・んだよ・・・、真琴に手当してもらってた時起きてたのかよ。でっけーイビキかいてたくせに」
「いや、そん時私爆睡してたし。てか私イビキかいてたの?」
「・・・え」
クソ・・・と呟きながら頭をかく二海に寝てたことを話すと、再び動きをとめた。
驚いたように見開かれた目で何度か瞬きをしながら、私の方を見つめてくる二海。
「な、なによ」
じっと見られすぎていたたまれなくなった私は、二海に言葉を催促する。
顔整ってるコイツに無言で見つめられるとなんか居た堪れないんだよな。
「・・・・・寝てたんならなんでわかったんだよ、左手首に違和感あるって」
右手で左手首をさすりながら私に聞いてくる二海。
もしかして、誤魔化せてるとでも思ったのかな。
「私が落ちてきた時に痛めたんでしょ。昨日と動き若干違ってたし・・・見てればわかるじゃん」
「えっ・・・」
二海から受けとったボトルのフタを外しながら答えると、またもや二海が目に見えて動きを止める。
・・・なんか今日固まってばっかりだな、二海のやつ。
そんなことを思いながらボトルを作りに行こうとすると、近くに茂木先輩が来ることに気がついた。
「あ、茂木先輩。二海のやつ、左手首痛いみたいなんで、無理させないでください」
「えっ!?二海、手首痛めてたの!?ごめん、俺気付かなくて・・・!」
そう言いながら二海に駆け寄る茂木先輩。
顔を覆い隠しながら茂木先輩に事情を話している二海をチラリと見つめながら、私は外にある水道まで歩いていった。



