──翌日。
学校に向かうため、アナウンスとともに到着した電車へと乗り込む。
良かった、今日は昨日より空いてる。
そんなことを思いながら車両の中に入っていくと、見慣れた制服を着た男子が目の前に立っていた。
「あっ、二海」
予想外な遭遇に、思わず名前を口にしてしまう。
だけど、彼は私に気付いてる様子はなく、外を眺めながら音楽を聴いているようだった。
伏し目がちなその表情に、少しだけ目を奪われる。
・・・二海のヤツ、黙ってれば意外と顔整ってるよな。
俗に言う“イケメン”ってやつ?
まぁ、腹立つぐらい性格が最悪すぎるけど。
そんなことを考えながら二海のことを見ていると、視線をあげた二海と目が合ってしまう。
「っ・・・!?」
私と目が合った二海は驚いたように目を丸くした後に、イヤホンを外して私の方に近付いてきた。
「よぉ、イノシシ女。今日は俺の足踏まないでくれよ」
「はぁ!?」
開口一番からの“イノシシ女”発言に、思わず声をあらげてしまう。
こいつ・・・ほんっとに口を開けばイノシシだのゾウだのと・・・!!
「こっちだって踏みたくて踏んだんじゃないって何回──わっ」
“何回言わせれば分かるの”
そう言おうとしたとき、電車がガタンッと音を立てて大きく揺れる。
急なことでバランスを崩してしまった私は、そのまま倒れ込みそうになった。
迫り来る床──そんな中で私のお腹に誰かの腕が当たり、ぶつかりかけていた床から引き離される。
「──大丈夫か?」
お腹に回された腕は、どうやら二海のものだったらしい。
ほぼ全体重かけたはずなのに、二海は微動だにせずに支えてくれている。
前に階段から落ちそうになった時も思ったけど・・・力、強・・・。
「う・・・うん、ありがとう」
頭上から聞こえてくる二海の声と全然ブレない体幹に驚きつつも、二海の体を支えにしながら上半身を起こして体勢を立て直した。
その間二海は口元を押さえながら、うつむくように目を逸らし、私のことを支えていた腕を見つめていた。
もしかして、私のこと支えた時に痛めた・・・?



