電車に揺られること数分、ようやく目的の駅に到着した。



固く閉ざされていた扉が開くのと同時に、ふわり、としたそよ風が私の体を包むように吹き抜ける。



熱気にまみれていた電車の中にいたせいか凄く涼しく感じる。



グーッと縮こまった体を伸ばしながら定期券で電車代を払い、駅の改札口を抜ける。



その最中も、ぶつかってしまった性格の悪い男は私の前を歩いている。



同じ学校に通っているわけだから否応なしに、同じ方向に向かわざるを得ない。



見たくなくてもわざとらしく腹を抑え歩く姿が視界に入るわけで。



本当、根に持ちすぎ・・・!



苛立たしさをむき出しにし、大股でその性悪男を抜き去って校舎まで無我夢中で学校へと歩みを進める。



駅から学校まではさほど距離がなく、歩いて数分程度ですぐに校舎にたどりついた。



でも、本当にあの男には腹が立つ!



確かに、ぶつかった私には非はある。



それは素直に悪かったと思う。



けど、なにもあんな言い方しなくたっていいじゃん・・・!!



仮にも私女だよ!?



女子に足踏まれて「骨が軋む」だの「ゾウ並みの重さでプレス喰らって」だの言っていいわけ!?



確かに数少ない女子生徒からは「産まれてくる性別間違ってる」だの「男子より男らしい!」だのと言われるけど!


男子からは完全に男扱いされてるし、誰ひとりとして私を女と認識されていないけどさ!



私だってれっきとした女なわけで、体重の事とかに触れられたらさすがに傷付くんですけど・・・!?



ガツガツと大股で昇降口まで歩いていくと、ふと大きい紙が貼られてあるのが目に止まる。



内容をよく見てみるとクラス替えの張り紙のようだ。



「あ・・・そっか。年に1回クラス替えするんだっけ」



1年の終わりの頃にクラス替えがあると知らされていたのを思い出しながらポツリと呟く。



完全に頭の中からすっぽ抜けてた、クラス替えの事。



知り合いがいますように、と祈りながら自分の名前を探す。



・・・あれ、見つからない・・・?



全てのクラスの名前を探したが、“辻本 茉弘”の文字がどこを探しても見つからない。



「うそ、見つからない・・・!?なんで・・・・・・!?」



戸惑いを隠しきれず、焦り始めるとフッと後ろから誰かの足音が近づいて来る。



そして、私の後ろでピタリと止まった。



「そんな所探したってお前の名前があるわけねぇだろ?タックルもイノシシ並、知能はミジンコ並みに低いってか?」



「なっ・・・!?」



この声、このひどい言葉の羅列・・・聞き覚えがある。



振り返ってみると、案の定あのクソむかつくサラ艶髪の茶髪男子だった。



「お前がさっきから見てるのは“新入生”の貼り紙。俺らのはこっち。選択したコースごとに書かれてる方。普通見りゃ分かるだろ、猪突猛進バカ」



近くにあったもう1枚の方の紙を指さしながら毒を吐く。



もうこの感情が怒りなのか羞恥なのか分からなくなってきたけど、こいつを殴りたい・・・!



「っ〜〜〜!!」



私は、無我夢中で指さされた方の貼り紙から“辻本茉弘”の名前を探す。



結局私の名前は簡単に見つかり、“2-A、機械科”と書かれているところにあった。



チラッと茶髪男子の方を見ると、「ほら見ろ」と言わんばかりの表情にさらに苛立ちがこみ上げてくる。



「へぇ〜・・・お前のクラス、2ーAか。俺も──・・・って、話聞いてんのか?」



勝ち誇った顔の茶髪男子がなにか話していたけど・・・無視!



乱暴に靴を履き替え、下駄箱の扉をガンっと大きな音が鳴るほど強く閉めてから教室まで走った。



今のは自分の落ち度だけど、やっぱりムカつく・・・!!