由紀と一緒に体育館の外にある水道で、茂木先輩に頼まれた飲み物を作る。
ボトルに水を汲み、ある程度溜まったらポカリスエットの粉を中にいれて混ぜはじめた。
溶け残りがあると、飲み終わりが凄く甘ったるくなっちゃうからな・・・気をつけないと。
「は〜・・・あっつい・・・。なぁ、ボトルまだ?」
ガラッと体育館の扉を開けて顔を覗かせたのは、じんわりと頬や額に汗をかいている二海だった。
「あっ、二海くん・・・!ちょっと待っててね、すぐに作るから」
「あぁ。サンキューな、三島。・・・それに比べて・・・このちんちくりんは気が利かねぇな」
由紀にはきちんとお礼を言うくせに私の頬をツンツンとつつき、馬鹿にしてくる二海。
私だってできる限り急いで作ってるじゃん!
「ていうか、汗だくすぎじゃない?まだ軽くしかやってないじゃん」
だって、今やってるのは軽いランニングと体を解すためのストレッチ・・・本格的に動いてはいないはずだ。
「・・・あっちぃんだよ、代謝が良いから。つーか、口を動かす暇があったら早くボトル作ってくれよ、イノシシ女」
「なっ・・・!イノシシ言うな!!」
まだ朝の事引きずってんの!?この性悪男・・・!!
ボトルを力いっぱい振りながら猛抗議する。
確かに突進しちゃったことは悪いと思ってる、足を踏んだことだって悪かったって素直に思う。
でもこんなにしつこく言う必要ないじゃん・・・!!
「・・・んで・・・れし・・・かお・・・すの・・・」
ムキになって言い返そうとしている時、隣からボソボソっと何かを呟いているのが聞こえた。
由紀の・・・独り言・・・?
「三島?どうした?」
「・・・ううん!なんでもない!・・・ボトル出来たよ」
声をかけられてハッとしたように顔を上げたあと、ニコニコと笑みを浮かべながら二海に出来上がったボトルを差し出した。
なんだろ・・・今日の由紀、なんか様子が・・・。
悩み事とかあるのかな?
「ん?あぁ、サンキュな」
差し出されたボトルを受け取った二海は、ボトルのキャップを外し、喉を鳴らしながら作りたてのドリンクを一口含む。
「──・・・」
一口飲んだあと、ちょっとだけ動きが止まる二海。
あ・・・もしかして・・・。
「──三島、ありがとな。これ、もらってくわ」
「!うん、いいよ!」
それだけ言い残し、体育館の中に戻っていく二海。
二海のあの反応・・・多分、粉を入れすぎて味が甘すぎたのかな?
でも、なんでそのことを由紀に言わないんだろう・・・あの性悪男の事だから「うわ、あっま!!」とか言いそうなものなのに。
性悪男もマドンナには厳しいことは言わないのね。



