ジャージに着替えたあと、着ていた制服を畳んでから更衣室をあとにする。
着ているTシャツは少しブカブカだけど、制服の時よりは動きやすくなったから、マネの仕事も楽にできそうだ。
そんなことを考えながら、私の着替えを待っていただろう由紀の元へと近寄っていく。
「・・・あ、茉弘!ジャージ着れた──。・・・どうしたの、そのTシャツ」
私に気付いた由紀が私の格好を見て首を傾げる。
「あまりにもジャージが小さすぎてね・・・途中で入ってきた二海がこれ着ればって」
「──・・・!?・・・ふーん・・・そうなんだ。札、ちゃんと変えなきゃダメだよ」
理由を告げると、私に背を向けながら相槌をうつ由紀。
なんだろう・・・今、一瞬だけ由紀が凄く怖い表情してたように見えた・・・?
「あっ、そうだ・・・。おーい、由紀ちゃーん。茉弘ちゃーん。次の休憩ん時に水分補給出来るようにポカリ作っといて〜」
ストレッチの途中の茂木先輩が、思い出したかのように私と由紀に声をかける。
「はーい!・・・茉弘、作りに行こう!」
「あ、うん」
さっき、一瞬だけ見えた怖い表情が嘘のようにパァっと明るい笑みを浮かべ私に声をかけてくる由紀。
やっぱり私の見間違いだったんだ。
マドンナ的存在の由紀があんな鬼顔負けの怖い表情、する訳ないもんね。



