腕を引っ張られ走ること数分──
ようやく目的地の体育館までたどり着いた。
「ハァっ・・・ハァっ・・・。な、何も走ることないじゃないですかっ・・・」
「あははっ、ゴメンね。もうすぐ練習始まっちゃうし早く連れてきた方がいいかと思って」
ごめん、と謝りつつもと無邪気に微笑んでいる茂木先輩。
この様子だと、本当に悪いと思ってるのか定かじゃないな・・・。
「よしっ、じゃあ中に入るよ!」
「あっ・・・はい!」
茂木先輩は私に声をかけたあと体育館の扉を開け放ち、中へと入っていく。
「待たせたね、整列して」
さっきまでのホンワカとした雰囲気はどこへやら・・・キリッとした雰囲気で体育館の中に入っていく。
その変化に驚きすぎて、体育館に入るタイミングを見失ってしまう。
「・・・・・・お前らも知ってるだろうけど、始業式の時にマネージャーの中島さんが倒れた。元々酷かった貧血がさらに悪化したらしい。その兼ね合いで、しばらくは中島さんには休んでもらおうと思う。・・・で、だ。中島さんがいない間、この子にマネージャー業の手伝いを引き受けてもらったよ。──ほら、入っておいで」
長ったらしい説明のあと、私に体育館の中に入るように促す。
多分、私がタイミングを見失ってたから気を利かせて入りやすいようにしてくれたんだろう。
だけど、絶対この流れだと中に入った時の視線がめっちゃ痛いやつじゃん!
私、目立つの苦手なのにな・・・。
ハァ・・・とため息をついたあと、覚悟を決めて体育館の中に入る。
「マネージャーの手伝いをすることになった辻本茉弘です。よろしくお願いします」
頭を軽く下げて正面を向いた時、見たくもない人の顔が視界に入った。
憎ったらしいほどサラサラでツヤツヤな髪の茶髪男子の二海が、驚いた表情で列の中にいて──。
嘘・・・でしょ・・・?



