劇が終わり、挨拶をすませた私達は各々文化祭を楽しんでいた。
私はと言うと、劇で告白してしまったことに対して尋問を受けていた。
「アンタ、自覚したのはいいけどあんな大衆の面前で告白することないじゃない」
「ごもっともです・・・」
由紀に手伝ってもらいながら衣装を脱ぎながら答える。
あの時は気持ちが昂って気にしてなかったけど、見てる人達も公開告白について公開キスをしたと盛り上がっているようだった。
そう考えるとめっちゃ恥ずかしい。
「公開告白に公開キスとか、しばらくは話題にされるわよ」
「忘れて欲しい・・・」
「まぁ、でも良かったんじゃない?好きな人と結ばれたんだもの」
そっか、由紀にとっては好きな人を取られたみたいな図面になってるんだ。
自分のことに浮かれて忘れてたけど、由紀だって二海のこと好きなのに。
「・・・なんか、ゴメン」
「・・・あのね、言っとくけど私、二海くんのこともう好きじゃないからね。・・・他に好きな人出来たし」
「えっ!?」
驚いた。
てっきり、由紀は二海のことが好きなままだと思ってたのに・・・。
「てか、二海くんのこと好きなままならアンタに助言なんてしないっつーの」
た、確かにその通りか・・・。
でも、好きな人って誰なんだろ。
「・・・だ、誰?私が知ってる人?」
「アンタが知ってる先輩よ」
誤魔化さずに答えてくれる由紀。
前までは好きな人なんて居ないよ、って誤魔化してたのに・・・。
変わったな、由紀。
だけど、私が知ってる先輩ってなるとかなり絞られるぞ。
「茂木先輩・・・とか?」
「・・・わかっても普通追求しないでしょ」
否定しないということは、そういうことだろう。
前に茂木先輩が由紀の好きな人を確認してたことがあったし、脈アリなんじゃないだろうか。
「由紀ならいけるよ」
「簡単に言わないでよ、かなり手こずってるんだから」
そんなことないと思うんだけどな〜・・・。
そう思いながら、制服に着替えスカートの裾を整える。
ずっと長いドレスを着ていたから短く感じてしまう。
「なぁ、辻本。着替え終わったか?」
制服を整えていると、教室の外から二海の声が聞こえてくる。
二海も着替え終わったのかな。
「終わったよ」
「・・・あのよ!・・・一緒に、文化祭回ろーぜ」
外から声をかけてくる二海の声に、思わず由紀のことを見る。
由紀はクイっと顎を動かして“行ってきなさい”とジェスチャーする。
「う、うん。回ろ!・・・じゃあ、由紀、行ってくる!」
「えぇ、行ってきなさい」
優しく微笑む由紀に背中を押され、二海の元へと駆けていく。
扉を開けると、二海が壁に背中を預けるようにして立っていた。
「・・・行こ?」
「おう」
私の言葉で壁から離れて私の隣に来る二海。
そして、目的地も決めずに歩き出した。
「・・・なぁ、辻本」
「なに?」
名前を呼ばれ、二海の方を見る。
だけど、二海とは目は合わない。
「・・・付き合ってくんね?」
そっぽを向きながらそう口にする二海。
「いいよ、どこ行く?」
「・・・そーじゃなくて・・・俺の彼女になってくんね?・・・ってこと」
私の答えを聞き、頭をガシガシとかきながら言い直す二海。
そんなの、答えなんて決まってるじゃん。
「・・・公開告白した奴が、嫌だなんて言うと思う?」
「・・・思わねぇけど・・・一応聞いとかねぇとだろ?」
「そ、そう・・・。ま、まぁ・・・付き合いますけど・・・」
二海から視線を逸らし、照れながら答える。
改まって言われると恥ずかしいな。
「・・・おう」
二海も照れているのか、頭をかきながら私とは違う方を見ている。
いたたまれない空気の中、どちらからともなく手を繋ぐ。
「・・・たこ焼きでも食うか」
「うん」
二海の手をしっかり握りながら返事をする。
歩いている途中、私は気になったことを聞いてみることにした。
「そういえば・・・さ。いつから私の事好きだったの?全然そんな素振り見せなかったじゃん」
そう、二海がいつ私のことを好きだったのか、だ。
態度は初対面から変わってなかったし、いつ好きになったんだろ・・・?
「・・・去年の球技大会の時。辻本が負けたあと悔し泣きしてた所見てからだよ」
「えっ!?なんでそれを・・・!」
「片付けしてる時に偶然見たんだよ。・・・で!!お前はどうなんだよ」
照れくさそうに頭を搔く二海は私に話題をふってきた。
私も答えなきゃ行けないのか・・・。
「私?自覚したのは文化祭の準備してる時・・・かな・・・」
「最近じゃねーか」
「仕方ないでしょ!?突然告白されてすぐになかったことにされたから自分の気持ちが分からなかったの!!」
二海の言葉にムキになって答える。
ここまで気付かなかったのは二海のせいでもあるんだからあまり言われたくない。
とは言っても、多分・・・告白される前から無自覚のまま好きになっていたのかもしれないけど・・・自覚したのはその時だ。
その後、色々言い合いをしながら2人で屋台を見て周り、思う存分文化祭を楽しんだ。



