それから劇の練習をしていき、ついに本番。
の、はずだったんだけど──
着替えに行ったはずの二海が全然戻ってこない。
「ねぇ、二海どこ行ったかわかる?最終打ち合わせしたかったんだけど」
由紀に化粧をしてもらったあと、片付けをしている由紀に声をかける。
「私に聞かれても知るわけないじゃない、今までアンタの化粧してたんだから」
「ですよね〜・・・」
「二海ならさっき女の子に呼び出されてたぞ。なんか女の子の方すげー緊張してるみたいだったけど・・・まだ戻ってねぇんなら告白とかじゃね?」
私の問いに対して、近くにいたクラスメイトが答える。
告白・・・!?
あの二海に・・・告白か・・・。
いや、でも二海カッコイイ方だし、告白もされるよね・・・。
なんだろ・・・二海に告白されるの、なんか嫌だな・・・。
「・・・茉弘、二海くんの事呼びに行ってよ。最後の打ち合わせもあるんでしょ」
「え、う、うん。わかった」
由紀に言われるがまま、二海を探しに行く。
とは言っても、どこにいるかなんてわかんないし・・・。
そんなことを考えながら廊下を歩いている時、話し声が聞こえてくる。
「あの・・・二海くん、私──あなたのことが好きなの!私と付き合ってください!」
その声を聞いて、足を止めて壁際に立つ。
ちょうど告白シーンだったみたいで、女の子が二海に想いを伝えているところだった。
二海、なんて答えるんだろ・・・。
「・・・俺、好きなやついるから、それには答えられねーわ」
二海の返答はNOだった。
それを聞いた途端、酷く安心したのと同時に、その好きな人ってわたしのことなのかな、なんて考えてしまう。
「好きなだけで、付き合ってはいないんでしょ?だとしたら、私にもチャンスがあるってことだよね?だったら、私の事好きになってもらうから!覚悟してて!」
告白した女の子は、諦めるどころかますます燃え上がっている。
それだけ伝えて、女の子はこちらへと歩いてくる。
すれ違いざまにその子を見たけど、とても可愛らしい子だった。
諦めてないんだ・・・この子・・・。
私だって、二海のこと──
そんなことを考えていたら二海がこちらに向かってきてるようだった。
「・・・ふ、二海!」
「辻本?なにしてんだよ」
「アンタが戻ってこなかったから呼びに来たの!最終打ち合わせもしなきゃいけないんだから」
告白を聞いていたことがバレないように、わざと今来たかのように振る舞う。
だけど、頭の中はさっきの女の子の告白のことでいっぱいだった。
「あー・・・悪い、ちょっとな」
そう言って目を逸らす二海。
さっきあったことは何も言わないのね。
その返事に、少しだけ胸がモヤモヤとした。



