原田くんの赤信号

 原田くんはやはり、『変な人』だ。

 そう言いきってしまうのは気が引けるから、言い方を変える。

 原田くんは『勇気を出して告白した女の子の前でいきなり自分の頬っぺたを叩く変な人』なのかもしれない。

 予期できなかった出来事に、呆気に取られるわたしの前、原田くんは泣きそうになっていた。

「ふふ、あははっ。ほっぺた(いて)えっ」

 でも、それなのに笑っている。
 やっぱり原田くんは、変なのかもしれない。

「俺ね、瑠美にフラれたことがあるんだ……」

 ほら、変な人が早速わけのわからないことを言い出した。

「え……?」

 わたしが、原田くんをフった?

 慌てて思い出のページを捲るけれど、そのページはどこにも見当たらない。
 だとしたらこれかな、と思った記憶を、原田くんに伝えてみることにした。

「前に、昇降口で原田くんが『俺のこと好きになってよ』って言ってきたやつ?わたし、『いやだ』って言ったよね」

 原田くんの天気予報。それが当たった日。

「まあ、それもあるけど」

 でもどうやら、これではないらしい。

「まだあったっけ」

 わたしの脳みそは、また思い出のアルバムをパラパラ探った。

 あれじゃないこれじゃない、それじゃあどれだろう、と悩みに悩んでいると、原田くんが照れくさそうな笑みを向けてくる。

「瑠美は覚えてないよ」

 わたしがフったのに、わたしが覚えていない?

「ちょ、ちょっと待って。今思い出すから」

 わけがわからず、あたふたしていれば、原田くんはチョコレートを持っていない方の手を、左右にひらひら振っていた。

「思い出そうとしたって無理無理っ。だってそれ、俺が何度も戻った過去での出来事だから」

 わたしがバレンタインデーまでしか生きられなかった、過去での出来事。

「何回も瑠美に好きだって告白したんだぜ、俺」