原田くんの赤信号

「ご、ごめんっ!貸してくれてありがとう!」

 慌てて礼を言い、脱ごうとすれば。

「いいっていいって。送ってくからそれまで着てなよ。俺べつに、寒くないし」

 と、優しさで返されて、身の置き場に困ってしまった。

 自分から誘い出して、アイスを奢ってもらって、聞きたいことだけを聞いて、そそくさ帰る。

 そんな自分の無礼な態度を、恥ずかしく思う。

「ありがとう、原田くん……」

 そう小さく言うと、原田くんは白い歯を見せてくれた。


「送ってくれて、ありがとう……」

 自宅の玄関前へと着いても、切なさは続いていて、元気が出ない。
 赤いパーカーを脱いで、原田くんに渡す際、指同士が僅かに触れただけで、全身にピリリと電流が走った。

 こんなにも、原田くんが好きなのに。

 告白もできず、チョコレートも渡せずで落ち込んでいると、そのパーカーを羽織った原田くんがわたしの名前を呼んだ。

「瑠美」

 原田くんは、穏やかな表情だった。けれどその顔の裏には、どこか哀愁が漂っているような気もした。

「福井のこと、諦めんなよ」