原田くんの赤信号

 ベンチの傍、チョコレートの入ったカバン。虚しく目に映る。

「わ、わたしの話はもう終わったよっ」

 カバンを携えて、わたしはすくっとベンチから立ち上がる。

「アイスのリベンジもできたし、聞きたいこともいっぱい聞けたし、もうじゅうぶんっ。そろそろ帰ろっか」

 ごちそうさま、と言って、わたしは原田くんの手元にあった裸のアイスの棒を、半ば強引に奪い取った。自分のと、原田くんのぶん、それ等をゴミ箱へ捨て終わり、高速で手を振った。

「じゃあね、原田くんっ。また学校でっ」

 ぶんぶんぶんぶん勢いよく振った手は、そのままどこかへ飛んで行ってしまいそう。
 本当ならばこの手でちゃんと、本命チョコレートを渡したかったのに。

 想いを伝えたところで、原田くんにフラれてしまう。

 それが怖かった。

 足早に家路を進んでいると、原田くんがわたしを追いかけてきた。

「なんで急にばいばいなんだよ、瑠美。本当は他に話したいことあるんじゃねえの?」

 わたしの隣で、眉毛をハの字に曲げる原田くんは、どうしてわたしがこんなにも急いで帰りたがっているのか、不思議に感じている様子だった。

 わたしは理不尽にも、そんな原田くんを無視し──

「てかそのパーカー、俺のなんだけど」

 無視、できなかった。