紅葉狩りにはまだ早い、秋口。
真っ赤な瞳で泣いて笑った原田くんを変な人だと思ったのは、ちょうど去年の今頃だったかもしれない。
「こんな時期に手作りチョコぉ!?」
メールで何度も説明したのにもかかわらず、キッチンに立った美希ちゃんはなお、丸い目を向けてくる。
「もお!だからさっきから言ってるじゃん!バレンタインの時に作った原田くんへのチョコは、結局渡せずにゴミ箱行きになっちゃったんだってば!」
「それならべつに、来年あげればよくない!?わざわざこんな、半年以上もズレた時期にあげなくてもさあっ」
「来年は来年でしょ!今年のぶんは、今年のうちにあげたいの!」
誰がどう見ても我儘なのはわたしの方なのに、ガツンと堂々と己を正当化するわたしに美希ちゃんは、「まじで超スーパー頑固者っ」と解せぬ顔を見せつける。
けれどもこんなわたしと長年友だちをやってくれている、心の広い美希ちゃんだから、そう嘆きつつも、ボウルや型を手際よく用意していた。
そして横顔だけで、ふふっと微笑む。
「瑠美ったら、いつの間にかそんなにも原田翔平のこと、好きになってたんだね」
噛みしめるようにそう言われて、わたしはひととき、この一年間を回顧する。
「最初はね、原田くんのことなんかただの変な人にしか思ってなかったの」
「うん。瑠美、そう言ってたよね」
延々としつこくて、わずらわしく思うほど強引で。そんな原田くんに、怒りを覚えた時もあった。
「だけど原田くんを知っていくうちに、原田くんはすごく一生懸命で優しい人なんだってわかった。真っ直ぐで純粋で、素敵な人。こんな人、わたしは原田くんしか知らない」
原田くんは、一生懸命で優しい人だから。
それが恋に落ちた一番の理由だと思うけれど、わたしが原田くんに恋をする前兆は、たくさんあった。
どうして福井のことが好きなの?他の奴でもよくない?
そう言われた時に自惚れて、だけどきっぱりと否定され、原田くんに意地悪したくなった時もそう。
なんでだよぅ、瑠美ちゃん俺と遊ぼうよぅー。
口を尖らせた原田くんを、可愛く思った時もそう。
俺は朝イチから瑠美に会いたいんだってば。
その言葉に、胸をキュッと掴まれた時もそう。
「原田くんと一緒にいる時間は全部、わたしが恋に落ちていくステップだったのかもしれない」
そこまで言っておいて、わたしの頬はぼっと熱くなった。
「や、やだっ!なんかしみじみ語っちゃったっ!恥ずかし!」
美希ちゃんはそんなわたしの頬に、冷んやりとした指の先端を押しあて言った。
「あははっ。瑠美の顔、超真っ赤っ。まるで瑠美が持ってきた、ラッピングセットみたいだよ」
原田くんを想って選んだ赤い包装紙。
しばらく出番がなかったそれで、わたしは原田くんを想って作ったチョコレートを包み込んだ。
真っ赤な瞳で泣いて笑った原田くんを変な人だと思ったのは、ちょうど去年の今頃だったかもしれない。
「こんな時期に手作りチョコぉ!?」
メールで何度も説明したのにもかかわらず、キッチンに立った美希ちゃんはなお、丸い目を向けてくる。
「もお!だからさっきから言ってるじゃん!バレンタインの時に作った原田くんへのチョコは、結局渡せずにゴミ箱行きになっちゃったんだってば!」
「それならべつに、来年あげればよくない!?わざわざこんな、半年以上もズレた時期にあげなくてもさあっ」
「来年は来年でしょ!今年のぶんは、今年のうちにあげたいの!」
誰がどう見ても我儘なのはわたしの方なのに、ガツンと堂々と己を正当化するわたしに美希ちゃんは、「まじで超スーパー頑固者っ」と解せぬ顔を見せつける。
けれどもこんなわたしと長年友だちをやってくれている、心の広い美希ちゃんだから、そう嘆きつつも、ボウルや型を手際よく用意していた。
そして横顔だけで、ふふっと微笑む。
「瑠美ったら、いつの間にかそんなにも原田翔平のこと、好きになってたんだね」
噛みしめるようにそう言われて、わたしはひととき、この一年間を回顧する。
「最初はね、原田くんのことなんかただの変な人にしか思ってなかったの」
「うん。瑠美、そう言ってたよね」
延々としつこくて、わずらわしく思うほど強引で。そんな原田くんに、怒りを覚えた時もあった。
「だけど原田くんを知っていくうちに、原田くんはすごく一生懸命で優しい人なんだってわかった。真っ直ぐで純粋で、素敵な人。こんな人、わたしは原田くんしか知らない」
原田くんは、一生懸命で優しい人だから。
それが恋に落ちた一番の理由だと思うけれど、わたしが原田くんに恋をする前兆は、たくさんあった。
どうして福井のことが好きなの?他の奴でもよくない?
そう言われた時に自惚れて、だけどきっぱりと否定され、原田くんに意地悪したくなった時もそう。
なんでだよぅ、瑠美ちゃん俺と遊ぼうよぅー。
口を尖らせた原田くんを、可愛く思った時もそう。
俺は朝イチから瑠美に会いたいんだってば。
その言葉に、胸をキュッと掴まれた時もそう。
「原田くんと一緒にいる時間は全部、わたしが恋に落ちていくステップだったのかもしれない」
そこまで言っておいて、わたしの頬はぼっと熱くなった。
「や、やだっ!なんかしみじみ語っちゃったっ!恥ずかし!」
美希ちゃんはそんなわたしの頬に、冷んやりとした指の先端を押しあて言った。
「あははっ。瑠美の顔、超真っ赤っ。まるで瑠美が持ってきた、ラッピングセットみたいだよ」
原田くんを想って選んだ赤い包装紙。
しばらく出番がなかったそれで、わたしは原田くんを想って作ったチョコレートを包み込んだ。



