18歳になってしまった今のわたしは、魔導士養成学校で最終学年をやり直している。
 4年前に一通りやったはずの勉強をまたなぞっていくというのも妙な話だが、何も覚えていないのだからちょうどいい。
 それに自宅で軟禁状態のまま過ごすのも気が滅入るだけなので、わたしから希望して通わせてもらっている。

 ただしハインツ・エルシードが付きっ切りで管理するというのが条件で、その日から彼はわたしにとって「ハインツ先生」になった。
 養成学校のほうは、勝手に転がり込んできた天才魔導士を放置するはずもなく、わたしの管理に無理が生じない範囲で早速「ハインツ先生の特別講義」が週に何コマか設けられている。
 
 
 通常18歳が養成学校の最終学年で、卒業生のほとんどは王宮所属の魔導士として社会人第一歩を踏み出していくのだが、全員が希望している部署に就職できるわけではない。

 希望部署が偏った場合や本人の適性と大きくかけ離れる部署を志望した場合、思ってもみなかった部署の配属になる可能性がある。
 しかしそこで腐らずに努力すれば、憧れの部署に異動もできるから精進するように。
 校長先生が講堂の壇上から穏やかな口調でそう語っている。
 
 進路希望調査書の書き方や諸注意を他の生徒と共に聞きながら、わたしは自分が従事していた仕事のことを考えていた。