「今日は空模様も安定して晴れているので、素敵なストロベリームーンが拝めるはずですよ。楽しみですね!」
「そうだな」

「今日は露店であれこれ食べたいのでランチは少なめにしました」
「なるほど」

 ちょっと、ちょっと!
 もう少しワクワク感出しましょうよ!

 浮かれて小躍りするハインツ先生など想像すらできないが、もうちょっと楽しみにしてくれたっていいんじゃないだろうか。

「ハインツ先生が学生だった頃の燈夜祭はどんな雰囲気だったんですか?」

 甘酸っぱい青春を思い出してもらいたくてそう尋ねてみたけれど、聞いてから失敗したと気づいた。

「養成学校には通っていなかったから、知らないな」
 その通りだ。
 ハインツ先生は魔法の才能を認められて初等教育が終了した14歳でもう大人たちと一緒に働きはじめた天才だった。
 同年代の若者たちがこうやって浮かれている間も彼はプロフェッショナルの魔導士として魔物討伐に駆り出されていたのだろう。

 わたしはポンと両手を合わせた。
「じゃあハインツ先生は今日が燈夜祭初体験なんですね!うんと楽しみましょうね!」

 シャドウにとってもハインツ先生にとっても、素敵な思い出になりますようにと願った。