「ハシェは何度かお見舞いに来てくれました」
 彼とは養成学校で何度か同じクラスになったことがあり、顔を合わせれば挨拶のほかに雑談もするぐらいの仲だった。
 卒業後は共に第2師団に所属していたようだ。

 学生の頃から第2師団を志望しているって言っていたものね。
 それが叶ったのね。
 18歳のハシェよりも少し精悍になった顔つきを見て感慨深く思っていたのだが、彼はお見舞いに来るたびになぜかわたしに「ごめん」と謝るのだ。
 謝罪の理由を聞いても「機密事項」とやらで教えてはもらえなかったけれど。

 もしもハシェが恋人だったのだとしたら、結局手ごろなところで手を打ったのねと思う。
 まあ彼なら遠慮のない友達同士のような恋人だったのだろう。
 
「魔物憑きになったせいでハシェにフラれたとかですかね」
「よくそこまで飛躍できるな」

 ハインツ先生の口ぶりから察するに、どうやら違うらしい。