今から、関川すずという女を説明しよう。

 たったひとつしか年齢が変わらないのにもかかわらず、自分の方が一学年上というだけで、彼女は歳下の俺を守りたがる。ぴーぴー泣くのは彼女の方で、心が脆いのも繊細なのも彼女の方なのに、俺に守られるのは嫌らしい。

 性格は素直じゃないし我儘だ。でもそれは、互いに同じだから強くは言わない。そしてこんな面もある。

 貸した百円を三ヶ月返さずにいると怒るけど、倍にして返せば「ありがとう」と心底嬉しそうな顔をする。人のお菓子をじっと見てくるたびほとんどをやると、これまた「ありがとう」と心底喜ぶ。揶揄えばすぐ不機嫌、しかし謝れば必ず許してくれる。一番の友達は奈津という女で、男友達はそんなにいない。意外と顔はいいけれど、強気な性格からかそこまでモテない。彼女はそんな女です。

 そして俺はこう思う。彼女を愛し愛されたことは、とても幸せだと。