「だーかーらー。早いとこすずがオッケー出せばいいのよ、岳くんの告白にっ」

 昼休み。同じクラスの奈津(なつ)が言う。

「ずーっと好きだって言われてて、ずーっと断ってて。これが岳くんの最終手段なんでしょう?オッケーしてあげればいいじゃんっ」

 私はズコッとコケる素振り。

「そ、それじゃあ岳の粘り勝ちじゃんっ。そんな気持ちで付き合ったって、うまくいかないよっ」
「だって、あんたも岳くんのこと好きなんじゃないの?」
「べ、べつに嫌いじゃないけど、それは幼馴染的な意味でしょっ」
「さあ、どうだか」

 奈津はヒュヒュイと口笛を吹く。私はふんっと息を吐く。

「岳は昔からずっと側にいるのが当たり前で、私にとっては弟みたいな存在なの。だからその岳と私が……」

 ギュウとか。チュウとか。

「い、色々恋人ちっくなことするのとか、想像つかないっ」

 私のその言葉で、彼女は窄めていた口元を元へ戻したかと思えば、そのまま大きく()けていた。

「勉強も遊びも友達も、全部放ってまですずを掴もうとしてんのに、そんな理由でフラれるんじゃ、岳くん可哀想っ」