13歩よりも近い距離

 驚くことに、それからの岳は二週間が経っても窓を開けなかった。何度名前を呼んだって、何度小石を投げたって、岳は私を無視し続ける。

「な、なんてしぶとい奴……」

 混乱する、頭の中。そして悔しいことに──

「岳のばか……」

 彼の策略にはまったのか、心底逢いたくなってしまった。


「なんか最近の関川さん、元気ないね」

 奈津に言われるならばまだしも、特別仲の良くもないクラスメートにそう言われ、私は喫驚した。

「え、わ、私……?」
「うん、関川さん。なにか辛いことでもあったの?身内の不幸とか」
「いや、全然そんなんないし、むしろこの前うちのお爺ちゃんの百歳祝ったばっかだし……」
「そうなんだ、それはすごいね。じゃあ、どうしてそんなにも暗い顔してるの?」
「へ?」
「まるで、大好きな人が死んじゃったみたい」
 
 
 大好きな人大好きな人大好きな人。
 コンクリートだけを眺め、行く家路。
 大好きな人大好きな人大好きな人。
 もし私にそんな人がいるならば、この状況で考えられるのは、ひとりしかいない。

「あ〜……嫌だ嫌だ、認めたくなかった……」