「岳ーっ。今日も学校行かないのー?」

 太陽と若葉が作った木漏れ日の下、自宅から十三歩歩めば岳の家。

「四月になってから一回も行ってないじゃーんっ。いい加減にしないともっとバカになるよーっ。一緒に行こーっ」

 二階の彼の部屋に向け、両手でメガホンを作って叫ぶ。

「せっかく迎え来たんだから一緒に──」
「うるせえっ」

 今日はいつもよりも数秒早く、窓が開いた。ボサボサの頭に半分の瞳。岳はおそらく今起きた。

「ひとりで行けよっ」
「すずたん、岳ちゃんと行きたーい」
「ちっさい時の呼び方すなっ」
「今日の給食、岳の好きなカレーだよーっ。行こうよお」
「行かねっ」

 ピシャンッと音を立て閉められる窓。私はそこに小石を投げつけた。岳は今日も、登校を拒む。