13歩よりも近い距離

「岳ちゃんのこと、好きかもしれない」

 ようやく落ちた夢の中、幼い自分がそう言った。

「だけど、岳ちゃんに好きって言うのはいやなの」

 もじもじと、服を摘んで俯いて。

「だって岳ちゃん、きっと目標を達成したら、消えちゃうもん」

 え?それってどういう……


「岳?」

 中途半端なところで目が覚めて、寝返りをうつ。隣に岳はいなかった。
 枕元のスマートフォンをタップして、時刻を確認する。眩い画面は『3:20』を示していた。

「岳……?」

 ベッドから降りた私は、そのまま岳の姿を探しに行った。
 

「あ、すず」

 一階の薄暗い台所。そこに岳はいた。

「岳、なにやってんの」
「喉渇いたから、水飲みに」
「そ、そっか」
「ごめん、俺の起きる音ですずのことも起こしちゃったんかな」
「ううん。そうじゃない」

 私が起きたのは、変な夢が原因だ。

「すずも飲む?」

 柔らかな表情で、岳はコップに水を溜めた。

「うん、飲む」

 彼から受け取ったそれを喉に流し込めば、要らぬ胸騒ぎは治った。
 
 だって岳ちゃん、きっと消えちゃうもん。
 
 夢の中の私は、どうしてそんなことを言ったのだろう。