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あれからもう6年。

あの頃はまだ18歳でいろいろ未熟で若かったが、今はもう25歳、あんなにも必死で青臭かった私はもうどこにもいない。


結衣と別れた後の私は結衣を忘れる為にいろいろなことをした。


結衣からもらったものや、少しでも結衣との思い出に繋がるものがあればどんなものでも捨てた。

地元に居れば結衣を思い出すし、何よりあそこは結衣の地元でもあったからいつ出会ってしまうかわからないのでお金がそこそこに貯まり次第、さっさと地元を離れた。

結衣との連絡アプリやSNS内での繋がりも断った。



こうして私は私の世界から結衣を完全に排除できるように努めた。

だけど私の世界から結衣はなかなか消えることはなかった。

その理由が〝あれ〟だ。


職場のスタッフルームに置かれている雑誌に視線を向ける。

そこには6年前よりも大人になった結衣がすました顔で表紙を飾っていた。

クリーム色の長すぎない柔らかそうな髪は無造作にセットされていて、その髪の間から覗く顔は相変わらず端正で美しい。

あの頃よりも大人の色気を感じさせる雰囲気も身に付いており、結衣の美しさは止まるところを知らないようだった。


結衣は私と別れた後、インフルエンサーから瞬く間にモデルとなり、今では人気急上昇中の超売れっ子になっていた。

あんなにも結衣を私の世界から徹底的に排除してきたのに、これのせいで世間にはモデルの結衣が溢れており、未だに結衣は私の世界へと居続けている。



「莉子さーん、まさか莉子さんも結衣くん推してます?」



じっ、と結衣が表紙を飾っている雑誌を見つめていると職場の後輩、綾音ーアヤネーが嬉しそうに私に近寄って来た。