『…嫌いじゃない。大好きだよ。だから私のいないところで変わっていく結衣を見ているだけの今の状況が耐えられないの。重たくて結衣の負担になってしまう前に別れたい、それだけだよ』
「…」
よかった。
スマホ越しに聞こえる莉子の声は切なく、切実だが、俺に嫌悪があるようには聞こえなかった。
むしろそれだけ莉子に執着されていたのかと思えると嬉しさで震えた。
あの莉子が俺をこんなにも好きでいてくれていたなんて。
『お願い。結衣、別れて』
莉子が俺を大好きで苦しいのなら別れるのもありかもしれない。
莉子が落ち着く為に一度距離を置きたいのなら喜んで受け入れよう。
莉子が選ぶことならどれも否定したくないし、何よりも莉子の心の平穏と幸せが一番大切だから。
それで莉子が落ち着いたらまた付き合えばいい。
お互いがお互いを想い合っていればいつだってまた付き合える。
1ヶ月、長くても3ヶ月もすればきっと莉子も落ち着くだろう。
ここで余裕を見せてもっと莉子に相応しい男になろう。
「わかった。それじゃあ」
俺は短くそう言って通話を切った。