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side結衣



莉子の隣にいても恥ずかしくない自分になりたかった。

莉子のようになりたかった。


人と関わることが苦手で怖かった俺にたくさん笑いかけてくれた莉子。

最初こそは「何故こんな俺に?」と警戒していたが、それも徐々に嬉しさに変わった。


莉子が話しかけてくれると嬉しい。
莉子が笑いかけてくれると嬉しい。
目が合えば、少しだけでも触れられれば、それだげで俺の体温はあがっていく。


気がつけば俺は莉子を好きになっていた。


だけどこんな俺が莉子から異性として好かれるわけがない。

莉子の周りにはいつもたくさんの友人がいた。
男女問わず莉子はみんなに平等で優しい子だった。


俺には莉子だけだったけど、莉子にとって俺は数多くの友人の1人だった。


だから俺は高望みなんてしなかった。


莉子が笑いかけてくれる。
友人として仲良くしてくれる。

それだけでよかった。


そんな俺に莉子は何と告白をしてくれた。
高校2年生の冬、莉子に告白されたあの日を俺は一生忘れない。
人生で一番幸せで嬉しかったあの瞬間を。



それから俺はずっと幸せだった。


高校を卒業してからはお互いの選んだ進路によって遠距離になってしまったが、毎日連絡を取っていたし、帰れる時は積極的に地元に帰って莉子に一番に会いに行った。