もうダメだった。







そう思った時、私の中の何かがプツンっと切れた。


もうダメだ。

別れよう。



このまま結衣を好きで居続ければ私はどんどん最低でダメな女になってしまう。
結衣の周りの全てが、結衣が私の手の届かないところに行ってしまうことが、結衣が変わってしまうことが、全てが耐え難い。


こんな重くて暗い女が結衣の隣に居られる訳がない。


だから別れようと思った。



スマホの画面を慣れた手つきで触り、SNSを閉じ、連絡アプリを開く。

そして私は結衣の名前のアイコンに触れ、電話を鳴らした。


♪〜♪〜♪〜


いつもより長く感じる呼び出しの音。
ずっと待たなければならないのかと諦めかけたその時、ピッ、と通話が繋がる音がした。



『莉子ーリコー?』



スマホ越しに少し低めの結衣の声が聞こえる。
大好きで大好きで仕方のない結衣の声。

私の名前を呼んでくれる、それだけで体温が一気に上がるのに、私は結衣に別れを告げなければならない。

そう思ってしまうと言葉がなかなか出なかった。



『どうしたの?』



何も言えないでいると、結衣が少しだけ困ったような声を出した。

私を気にしているようにも聞こえるがきっと違う。
結衣の声の向こう側には数人の人の気配を感じた。

ざわざわと誰かがいる声が少しだけ遠くに聞こえる。きっと結衣はその人たちのことを気にしているのだ。

私と電話をしている場合ではないのかな。
私は彼女なんだよ?


ああ、また暗くて重くて最低になっている。
こんな私はもう嫌だ。