『……は?来ちゃったじゃねーよ。お前、俺んちを何だと思ってる訳?』

『え?田舎のばーちゃんちみたいな?ほら、僕も翠も田舎とかないからさ。せめて帰省した気分だけでも味わいたいなぁと思って。だって渓んち、まさにって感じでしょ?ってことで、お邪魔しまーす!』


玄関先で思いっきり眉間に皺を寄せる渓くんに全く怯むことなく、お兄ちゃんはズカズカと上がって行く。


「あのなぁ……」

「あっ、あのっ……!」

「……ああ、あいつは言い出したら聞かねーからな。もう好きにしろ」


玄関に取り残された私がお兄ちゃんの背中と渓くんの顔をあわあわと交互に見やれば、渓くんはそう言って私の頭をくしゃりとした。


「……スイカ、かってきたの。おにわでスイカわり、してもいい?」

「ふ、ああ」


触れられた頭を押さえながらおずおずと言えば、渓くんが柔らかく笑った。