ーーだけどあの日。



あの光景を見てしまったあの日から、終わりへのカウントダウンは始まっていたんだ。


『ーー来週のお前の誕生日、今年もちゃんと空けとけよ。

ーーその時、……あー、お前に話したいことが、ある』


タイムリミットは、もうすぐそこ。


いつか、こんな日が来ることは分かっていた。


だから大丈夫。


あの時私を孤独から救い出してくれたあなたの手を、私はきっと離せるよ。


ちゃんと、"2人"の幸せを、願えるよ。


私も大人になったから。だから今度こそ。




「ーー私はもう1人で大丈夫ーー」




ポツリと漏れた呟きは思ったよりも頼りなく、開け放している台所の窓から流れ込んで来た、まだ明け切らない梅雨独特の湿気と夏の匂いを含んだ生温い風に攫われて、消えた。