「ちょっと前から、おかしいと思ってたんだ」


「…」



原因不明、薬で進行を遅らせることしかできない病。



色々説明を受けて、「大丈夫だろ」なんて相手に心の内を知らせてはなるまいと肩を叩いたけれど、実際俺は絶望しか頭に残っていなかった。



医者が口にするのは救いようの無い言葉だけ。少しの希望も持たせては貰えなかった。



もうどうにもできなかった。手遅れだった。



視界が揺れる、とか、貧血気味で起き上がれそうにないことだってあった。



何かあるたびに病院へは勧めたけれど、軽い風邪だと優羽が言うから、そう信じこんでいた。



...否、それは責任逃れでしかない。俺もそこまで重く受け止めていなかった。



あの時、俺がもう少し強く言っていたら。



そんな後悔はいつの間にか顔に出るくらいに膨らんでいたらしい。



「ねえ、秋頼が傷つくことなんてない。そんなの僕が許さないよ」



そう言って手に乗せたのは桜色と白色のミサンガ。



僕の夢も乗せておいた、って笑ったんだ。



優羽は当然運動もできない。バスケ部を辞めたことを知ったのは、病気だとわかってからすぐの事だった。