そんな勇気があればこんなふうに口を噤んでなんかいないのだ。



「秋が後ろに隠してる何かって、お前らにとって大事なことなんじゃない。
...当事者じゃねえから、憶測だけど」



どういう意味と口を開こうとすると、夏音くんは目的地の被服室へ歩き始めてしまった。



自分で考えろ、ってこと?



絶対に由良くんに聞いても答えはくれない。だからといって今の時点で考えるのには余りにもヒントが少ない。



もし本当に夏音くんが言うように、私にも関係があることなら。



私のせいで、時々ひどく悲しそうな顔をしているのなら。



私は─────。




「手伝ってくれるのは嬉しいけど。視線が鬱陶しい」



注意深く見ていれば何かわかるかもしれない。憶測で動いて由良くんを傷つけてしまいたくない。



誰もいない教室、机ひとつ分の距離で見つめていたら案の定由良くんは眉をひそめた。



お菓子の家に使うお菓子を一つずつ画用紙で作っていく作業中。



と言っても、ハサミを持つことを禁止された私は、画用紙に下書きをするだけ。



本当に支えになっているのか。



これじゃあ、邪魔してるだけみたいじゃない?