「僕たち全員、妖精の姿が見えるよ。リズみたいに気さくに会話することはないけど」
 ケイルズによると、妖精と会話するにはまず彼らの好物である角砂糖やキャンディなどの対価を支払ってからでないと話し掛けられないらしい。しかも話し掛けて答えてくれるかもその妖精の気分次第だ。

 リズのように無条件で妖精が自発的に話し掛け、動いてくれることは大変珍しいようだ。
「どうして妖精が見えていることや、妖精の性質を教えてくれなかったのですか? 私、知らなかったです。それにてっきり叱られると思って……ずっと思い悩んでいました……」
 気づけば瞳には水膜が張り、目尻から涙が零れそうになる。

 元の姿、十七歳のリズならこれくらいのことで感情に振り回されることはなかったのに、何故か七歳のリズには抑えることができない。
 すると、メライアが優しく抱き締めて背中を撫でてくれた。

「嗚呼、リズ泣かないで。聖学の勉強を一緒にしているけど、まだそこまで内容が辿り着いていなかったのよ」
 リズはメライアの時間がある時に彼女から少しずつ聖学について学んでいる。習っている内容は教会本部にいた頃の知識が大半で代わり映えがしなかった。
「進み具合がゆっくりだったのは、都会から田舎に来たって聞いていたから新しい環境に慣れるまでは様子を見ていたのよ。だけど、知らないことばかりで却って混乱させてしまったわね」

 リズはメライアの言葉に虚を衝かれた。