その話を聞いてリズは目を丸くした。
 水には浄化の力があることは聖学で学んでいたが、それが水の妖精の力にも適用されるなんて思ってもみなかった。
「これなら、クロウさんが影に襲われて苦しむこともありませんね。凄いです、アクア!」
『リズが喜んでくれるなら、当然私は力を貸すの。これくらい朝飯前なのっ』
 えっへんとアクアが胸を張ると、今度はヴェントが口を開いた。
『アクアのお陰もあるけど、彼の生気が戻ったのはリズのご飯のお陰だよー』
「えっ、そうなのですか?」
 首を傾げると今度はイグニスが口を開く。
『リズが作るご飯を食べれば食べるほど、彼は呪いに打ち勝てるようになる。だから毎日欠かさずご飯を持っていってあげて』
 お腹が空いたら悪い方向にばかり意識が向いてしまうし、体力も落ちてしまう。ご飯を食べれば心は満たされて前向きな考えができるようになる。
(イグニスの言うとおり、クロウさんには少しでも元気になってもらって、聖力を充分持つ司教様がいらっしゃるまで持ちこたえてもらわないといけません。そのためにも司教様にきちんとお話しして、離れ棟へ行くお許しを頂かないと)
 リズは胸の前で拳を作ると、これからもクロウのために美味しいご飯を作ろうと思った。