「え?なんでそんな不貞腐れてるの」

「だって…キスが上手い理由なんて…考えたくもないですけど!他の誰かに仕込まれたのかと思うと、何だかもう、妬けて妬けて…」

「仕込まれたって…あのねえ、言っておくけど私、遊び女じゃないよ?」

「それはよくわかってます。だから妬けて仕方ないんですよ。それだけ真剣に誰かを想ってたんだな…と思うと、悔しくて」

やれやれ…。

いつの間に私よりずっと大人になったものかと思ったが、なんやかんやでまだ子供のようだ。

でも、そんなところも可愛く思えるなんて、これが恋の魔法というやつだろうか。

「バカね…。今は森川と付き合ってるのに、前の彼のことなんか考えてると思う?」

「あー!今、前の彼って言った!それ、いちばん聞きたくないワードだから、これまでも、絶対に言わせないように気を付けてきたのに…」

急に話題をすり替えたり、挙動不審だった理由はそれだったのか。