とは言え、それ以上でもそれ以下でもない。

単純接触効果か何か知らないが、逢えば逢うほど、そして、毎日のように電話で声を聞いている内に、森川に心を奪われていく自分を感じていた。

昔は、あんなに嫌っていた相手なのに…。

だから、想いを口にすることなど出来やしない。

そのことが苦しくて切なくて…。

こんなことになってしまったのは、かつて彼の中身も見ようとせず、冷たくし続けた自分への罰なのだろうか。

親しくなったにも関わらず、森川がどういうつもりで私とこんな風に会ったり電話しているか、その心理もわからない。

都合よく解釈するなら、森川も私に好意があるからということになるが、それはまずあり得ないだろう。

もし、逆の立場だったら、私は自分にとことん冷たくした相手に好意など持てやしないから。

かといって、森川は、私を惚れさせておいて、こっぴどく振るような残酷な男にはとても見えない。

森川の心が全く読めなくて、ずっと悶々としている。

これが初恋ではないものの、こんな切なさは初めてだ。