噂の転入生……
それは突如やって来たんだ


颯太から転入生の話を聞いてから1週間

チャイムが鳴って担任が入って来るのを待っていると、教室の扉がガラッと開いた

入って来た担任の後ろに続いて入って来たのは……


「今日から転入して来たえーっと……」

「勝哉。以上」

「……」

ビビりまくってる担任を見て笑いそうになった
だけど笑えない。何故なら俺もビクついているからだ


勝哉と名乗った大男は見るからにヤンキーだった
背の高さも朔夜並みに高いし顔はまぁ普通に男前部類に入るだろうけど……

何より見た目が恐い

ピシッとしている空気の中チラッと颯太の方を見てみると、あいつは俺と目が合った瞬間首を横に振った


あれはヤバイぞ


まるでテレパシーかのように颯太の声が頭の中で聞こえる


彼は空いている席に近付いて行った
……と思ったら、その机の上に鞄をバンって置いてそのまま教室から出て行ってしまったんだ












『そ、颯太ーっ!』

「おおっお前の言いたい事はよく分かってる!」

休み時間に俺達は同時に駆け寄った

『何あれ?クラスの中で1番のヤンキーも超びびってたんだけど!』

「ああ、ありゃ本物だ」

『どうしよう、俺怖い』

「大丈夫だ!出てってからまだ戻って来てないしきっと帰ったんだ」

『でも鞄置いたままだけど』

「あ、そっか」

転入初日で右も左も解らないはずなのに一体何処に行ったんだろう








昼休みになり、俺は売店まで走った
早く食って朔夜に会いに行かなくちゃ

売店に到着したのはいいがまたガタイのいい運動部の奴らが占拠していたんだ

えーっ!またかよっ
こいつらいる時なんでいつもいつも団体様なんだ!?
また俺の昼飯がなくなるじゃねーか!!

『ぐ、ぐぬぬぬ……』

人混みを掻き分けて何とか食い物を取ろうとしたけど、もう少しの所で弾き飛ばされた


『いてて……』


こんな光景朔夜に見られたらきっと大変な事になるだろうな

はぁ、昼飯は諦めるか……

しょんぼりしつつ一度教室に戻ろうと振り返った時、ドンっと誰かにぶつかってしまった


『あ、すいま……』

「ああ?」


で、出たーーー!!!


俺がぶつかった相手はさっきの転入生……勝哉と名乗ったくそヤンキーだったんだ


『ご、ごめんなさい。ちゃんと見てなくて……』

「チッ」

『すいませんっ』

彼はペコペコ謝る俺を無視して売店に群がる運動部に近付いて行った




「どけテメーら!!邪魔だクソが!!!」

彼がそう一喝吠えると、皆んなびっくりして慌てて散って行ったんだ



す、すげー
運動部に負けないあの迫力……

俺が呆然と眺めていると、くるっとこっちに振り返った


「……ほらよ、あいたぞ」

『えっ』

そう俺に一言だけ言い、彼はまた何処かへ行ってしまったんだ



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