それから、あっという間に今日の履修が終わった。
帰る準備をしていると…
「大丈夫!?」
隣で立った拍子に、ふらついた沙奈ちゃんを咄嗟に支えていた。
「ごめんなさい…。」
「沙奈ちゃん…。大丈夫?
無理してない?」
今日1日、沙奈ちゃんはずっと顔色が悪かった。
元々の色白さ加えて、心疾患か呼吸器疾患を抱えているような顔色の悪さが滲んでいた。
きっと体はあまり強くない…
むしろ、病弱なのだろうと感じ取っていた。
「沙奈ちゃん。今日、出会ったばかりだけど何かあったらいつでも頼ってよ。
同じグループになれたのも、何かの縁だから。
それに…俺、沙奈ちゃんが無理している姿見てられないかも…」
彼女の使っている教科書や、実習で使うはずだったであろう綺麗にまとまったノートを見ていると、彼女のこの実習にかける思いが痛いほどに伝わる。
本気だからこそ、沙奈ちゃんはたとえペーパーペイシェントだったとしても、その人に寄り添うことができているんだと思う。
だけどまた、一人で抱え込んで体調を崩してしまうのは本末転倒な気がする…
「…本当に大丈夫だから…。
ありがとう、絢翔君。」
沙奈ちゃんはそう言うと、俺から離れゆっくりと帰る準備を続けた。
「沙奈ちゃん。今日は一緒に…」
「沙奈…」
聞き慣れた低く落ち着いた声が、後ろから聞こえた。
「大翔先生…」
「えっ…?大翔!?」
「沙奈、迎えに来たよ。
絢翔。久しぶりだな。」
「えっ…?どういうこと…?」
完全に戸惑っている沙奈ちゃんの手を握り、これ以上俺が沙奈ちゃんに近づけないように大翔は沙奈ちゃんを自分の元へ抱き寄せていた。
「絢翔。沙奈のこと支えてくれてありがとう。
でも、この先は俺の役目だから。」
「大翔先生…。絢翔君と知り合いなの?」
「絢翔と俺は従兄弟なんだ。」
「そうなんだ…。」
「編入したって聞いたけど、まさか沙奈と同じ大学とは思わなかったよ。」
大翔の視線が、嫉妬の眼に変わった事に気づく。
「そっか…。まさか、沙奈ちゃんが大翔と繋がりがあるなんて思いもよらなかったよ。」
俺の言葉に、大翔が沙奈ちゃんを抱き寄せる力が強くなる。
「沙奈は俺の大切な彼女だから…」
大翔はそれだけ言うと、沙奈ちゃんの手を握り教室をあとにした。
初めてみる、大翔の大切な女性を譲らないという強い意思。
大翔は、昔から大切なものだけは絶対に譲らない。
きっとそれだけ大翔は本気なのだろう。
それに…沙奈ちゃんも。
今日1日で1番と言ってもいいくらい、優しい笑顔を大翔に向けていた。
きっと、俺が入る余地は無さそうだな…


