それから、月日は流れ1ヶ月が経とうとしていた。
あれほど苦しかった呼吸は落ち着いて、酸素も外れていた。
病院の中庭を、ゆっくり散歩できるまで身体は回復していた。
大翔先生に生きていてほしいという言葉があったから、ここまで前向きに治療に取り組めたと思う。
それでもやっぱり…
気にかかることは大学のこと。
休むことを決めた日以来、大学からの連絡はなかった。
床頭台に置かれた実習のノートに手を伸ばすと、
コンコン
静かな病室に、ノックの音が響いた。
「失礼します。」
「…教授?」
担任の川崎教授と大翔先生が病室へ入る。
「身体の具合は大丈夫かな?以前よりも顔色も良さそうだね。」
「…だいぶ、回復してきました。」
私の言葉を聞いて、安心したかのように頷いた。
「良かった…」
しばらく、3人で他愛のない会話をした後に川崎教授は一枚の書類をオーバーテーブルへ置いた。
置かれた書類に、そっと手を添えたと同時に胸が締めつけられる。
裏返しにされた書類…
きっと休学届…
少し覚悟を決めてから、渡された書類を確認する。
「…えっ?」
そこに書かれていたのは『履修案(仮)』だった。
私の反応を見て、大翔先生も教授も優しく笑う。
「君にはまだ、医師になるための資格がある。」
教授の言葉に、目を見開く。
「本命である精神科実習は参加できなかった。それは、確かな事実だ。
でもね、それだけで医師への道が閉ざされるわけではないんだよ。」
川崎教授は、ベッドサイドにある椅子へゆっくり腰を下ろす。
「大学でも話し合いを重ねた。沙奈さんがしっかり体調を整えた後、補習実習や代替日程でどうにか単位を修得できないか。
今、その方向でその方法を検討している。」


