「飲んで、落ち着いて。悪いようにはしないから」

 杏奈が隣で缶を口元へ寄せるのが横目に入り、モモも心の平穏を求めるように一気に半分を飲み干した。

「……ナギはおじ様の元へ向かったのだと思うわ」

 依然無言のまま、杏奈が向けた(おもて)に対峙する。

「自分の未来と、貴女の自由を求めるために」

「え?」

 ──あたしの……自由?

 一瞬理解不能で視線が泳いだ。どうして今でも自分が関わっているのか。

「それだけ焦っていたということは、彼、大きな荷物でも抱えてた? それでもう帰ってこないのだろうと悟ったのね?」

 図星の質問に何と答えて良いのか分からず、今度は視界が揺れ動く。

「どうして自分が巻き込まれているのか、どうしてナギは戻ってこないのか……貴女には不思議よね。ナギが動き出したのだからもう言うわ。それはね──」

「は、い……──?」

 ぐるりと天地がひっくり返って、手にした缶は地面に茶色い()みを作り、コロコロと転がった。

 ──えっと……あれ……れ?

「ごめんね、モモちゃん」

 杏奈らしき女性の細腕に抱き締められ、モモは意識を失った──。