「ふうん、まぁいいわ。でも二ヶ月後には私も混ぜてくれないと困るわね。ほら、約束の期日。忘れてないでしょ? ナギ」

「あんな約束は無効だ。俺があの家から縁を切ったあの時からな……お前だって納得いかない筈だ」

 妖しく微笑む目つきの杏奈と、言葉の雰囲気からまだ落ち着きを保っている目には見えない背後の凪徒。

 その狭間(はざま)で戸惑うモモは、上から照らし雄姿を見ろと呼びかける華々しい炎の舞に、目を向けることも出来ず立ち尽くしていた。

「あっ、いたいた! モモたーん!!」

 花火の音と音の静寂の間に、ずっと後ろから甲高いリンの呼ぶ声が聞こえた。

 モモは咄嗟(とっさ)に振り返ったが──

「おじ様の言葉は絶対だって言ったでしょ? そろそろ目の前の『彼女』にも釘を刺しておきたいから言っておくわ。……ね、モモちゃん、私、ナギの『いいなずけ』なのよ」

 ──え……?

 背後から近付く暮達三人と、モモの視線が杏奈の潤んだ紅い唇に釘付けになった刹那。

 モモには間違いなく数秒時間が止まった気がした──。