──本当に……先輩の場所は、あの会社なの?

 どんな時でもブランコに乗っている凪徒は輝いて見えた。

 美しい舞。見事な技。

 幾ら叱られてもついて行けたのは、その説教に真実味があったからだ。

 全てが事実だった。

 あの大きな背に一歩でも近付きたい。

 そう思えたからこそここまで来られた──なのに……。

 ──先輩は『(あたし)』のために『自分』を捨てるの……?

 モモは分からなくなった。

 凪徒のあるべき場所も、見るべき夢も、そして自分のそれらも。

「いや……だ。そんなの……やだ、よ──」

 アーケードの出口までフラフラと歩いた足取りが止まる。

 ちょうど右に(そび)えた電柱にもたれ額に手を当てた。

 視界に入ったテントのてっぺんを隠すように(かざ)し、それでも足りない気がして瞼を閉じた。

 その下の強張(こわば)った頬を一筋の涙が伝い落ちていった──。



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