「あ、あの……今って遺伝子検査とか簡単に出来るんですよね? その……先輩はあたしの髪の毛とかで結果を知ったんでしょうか?」

 ふと思いついた証明の手立てを、杏奈にぶつけてみたが、

「そうね、調べたかもしれないわね。でもナギとは一対一で話していないから、私には分からないわ。だけど少なくとも『私』は調べたわよ。あの東京への往復で、毛根の付いた貴女の髪の毛なんて容易に手に入ったもの……そろそろおじ様の元へ結果報告が届いている筈よ。電話でもして確認してみる?」

「い、いえ……」

 意外な返しにモモは(おのの)いてしまった。

 あの連行にそんな意図があっただなんて。

 そして更に繋がった一つの疑問──凪徒が杏奈に髪を撫でられなかったかと心配そうに尋ねたのは、そんな意味もあったのかもしれない。

「でも、ね」

 少し前の過去がモモの頭の中をグルグルしている間に、杏奈は気持ちを改めたのか、少し明るめの声を出した。

「私はナギが戻ってこようがこなかろうが、貴女が桜の人間であろうがなかろうが、一人の人間として傍に置きたくなった……って言ったら驚くかしら?」

「え……?」

 ──や、やっぱり、それって、そういう(、、、、)趣味が……!?

 いつになったら平穏な気持ちに戻れるのだろう……モモは次から次へと溢れる驚きの連続に目の前が真っ白になりそうだった──。