「あははははっ……!!
何を言い出すのかと思えばっ……くくっ!ツバたん!何を甘っちょろい事を言ってるのっ?」
ミヅクさんは「プッ」と吹き出した後にお腹を抱えて笑って、また語尾に音符マークを付けたような口調で話し始める。
「再戦もなにも、この勝負はまだ終わってないじゃない?」
「……。え?」
この勝負は、まだ終わってないーー?
ミヅクさんの言葉の意味が、俺にはすぐに分からなかった。
すると、そんな俺に……。ミヅクさんが、テーブルの上に残った、最後の一つの盃を手に取って差し出す。
「さぁ、ツバたんの番、だよ?」
そう言って、目の前に置かれたのは、毒の入った盃。
「ボク、言ったよね?
"毒入りの盃を飲んだ方が負け"……って」
ドクンッと、反応する鼓動。
その言葉に、ようやくこの勝負の真の決着方法を、俺は理解した。
「まだこの勝負は終わってないよ?
ツバたんがこの盃を飲んでくれなきゃ、終わらない」
腕組みをして、足を組んで、ミヅクさんは見下したような視線を俺に向けて、そう告げた。
『勝負は簡単。
この盃の一つにこの毒薬を入れるから、それを飲んだ方が負けだよ?』
確かに、ルールを説明する際にミヅクさんは言っていた。"毒を飲んだ方が負け"と。
つまり、この勝負はーー……。
俺がこの盃の水を飲み干し、その結果が出るまで終わらないのだ。
例えこれが最後の盃であり、毒入りである事が分かっていたとしても……"飲み干すまで"終わらない。
「っ、そんな……!」
この状況に、ジャナフが絞り出したような声で呟くのが聴こえた。
でも、ミヅクさんに落ち度はない。
あるならば、しっかりとルールの説明を理解せず勝負を始めた俺の落ち度だ。
下剋上を始めてしまった時点で、それはもう、勝負内容を全て承諾しているのと同じなのだから……、……。



