このまま、もう会いに来てくれないのかな?
ボクの顔なんて、もう見たくないのかな?
ツバサに、嫌われちゃったのかなーー……?
怖くて、不安で……。
何も答える事が出来ず、ボクはギュッと目を閉じて目の前から目を逸らした。
すると、
「……若いねぇ〜」
また笑いを含んだ声が聞こえたと思ったら、手に持っていた弓がスッと取り上げられる。思わず「え?」と目を開けて見渡すと、白髪の子は弓の弦をオモチャのように指でビンビン!と弾きながらボクに言った。
「恋煩い、ってヤツだ」
「!っ、……へ?」
「今考えてる子に、恋、してるんだ?」
「ぃえ……ッ?!」
「いや〜若い若い!若いっていいねぇ〜♪」
その口調は、まるで語尾に音符マークを付けたよう。声を弾ませながらそう言われて、今度は一気に恥ずかしくなり、ボクは分かりやすいくらいにボンッ!と赤面してしまった。
それに、「若い」って言われたけど……。いや、確かにボクもまだ十代で若いけど、目の前のその子だって十分若く見える。今のように無邪気に笑っていれば、やはり子供にも見えてしまう。
この子、本当に一体何者ーー……?
動揺したまま、心の中でそう問い掛けた時だった。
「ーー……っ、ミヅク?!」
弓道場の入り口の方から、声が聞こえた。その声は、ボクも知っている人で、今日ボクが弓矢を教えてもらおうと待ってた人。
「あー!ノゾみーん!」
ーーえ、っ?
白髪の子を「ミヅク」と呼んだのはノゾミさん。
そして、その白髪の子"ミヅク"はノゾミさんを「ノゾみん」と呼んだ。
その、親しげな様子と、この場が夢の配達人の隠れ家だと言う事を思い出して、ボクはようやく気付いた。
この子、夢の配達人なんだーー。
そう分かったら、さっき感じた只者ではない雰囲気が気のせいでない事が確定した。
でも、まだまだ未熟なボクは、この時すぐにミヅクさんの存在の凄さにまでは気付けなかった。



