変わり果てた、大切な友人であり身内の姿。

「っ、ラン……!」

俺は、そんなランに語り掛けた。

「ラン!っ……ラン!!
俺だ!ツバサだ!!分からないかっ!?」

嘘だ、嘘だ。
ランがこんな風になってしまうなんて、信じたくなかった。

俺の知っているランは、元気で、明るくて、よく笑って……。落ち込んだり、やる気を失っていると、いつもその元気や明るさを分けてくれて、笑わせてくれるんだ。

あんな、生気のない、変わり果てた瞳をした彼女を信じたくなかった。

……、……けど。

「……ツ……バ、サ?」

ーー…………。

俺の名前をポツリッ、と呟き、視線を合わせられた瞬間。俺は、ある事実を悟った。

……。
…………嘘、だよな?

俺に向かって、力無く青白い顔で微笑む表情。何より、虚な瞳。

その瞳の奥には、すでに……光がなかった。

……え?
…………っ、え……?

……っ、だって…………動い、てる。
今、俺の目の前で……ッ、名前を……呼んで…………。

信じがたい、残酷な現実。

歩い……てるじゃ、ないか…………。
っ、なのに……なの、に…………。
嘘、だよ……な?……、…………ラン。

俺が駆けつけた時には、もう、遅かった。

……もう、手遅れ……なんて…………。

…………。
死んでる、なんて…………。

嘘、だろうーー……?

ーー……ドサッ!!
と、力の抜けた俺は床に両膝を着いた。
脚にも、手にも、力が入らなくて、立ち上がる事が出来ない。

ーーもう、死ん……でる?

それでも、ランから瞳を逸らす事が出来ない。
命の光の灯っていないランの瞳から、俺は瞳を逸らす事が出来なかった。

時間が止まったような俺の耳に届く、(ブーツ)の音。ランは、力のない笑顔を浮かべたまま、フラフラと俺に歩み寄ってくる。
そして、目の前で自らも両膝を床に着き、ナイフを持っていない左手で俺の頬を撫でながら言った。

「うれ……しい」

「っ……」

「きて……くれた」

「ーー……ッ」

ランと、俺。
二人の瞳から、同時に涙が溢れ出した。