ーー……え?
空気が、一変したような気がした。
その言葉に、きっと私はようやくランの事をハッキリと見た。
私が今まで見て来た、明るくて、活発で、いつもみんなの先頭を歩いている女の子の中に隠れていた、本当の彼女を……。
「覚えてる?昔、よく一緒におままごとしたよね?」
「っ、え、ええ……」
振り向いた私の瞳に映る笑顔のラン。
にっこりと微笑みながらそう尋ねられて、一瞬、さっき呟かれた声の暗い印象を気のせいかとも思った。
いや、気のせいだと思いたかった。……けど。
「あの時、いつも私がどんな気持ちだったか……知ってる?」
「え?」
「私の好きになった人は、世間では許されない……。結婚出来ない人だから、"せめて遊びの中でくらいは奥さんでいたい"って、思ってた気持ち」
ーー……え?
ランの言葉に、まさか、って思った。
頭の中に、ランの言葉が指している人物が浮かびながらも、私は困惑した。
だって今まで……。幼い頃も、再会してからも、ランがそんな素振りを見せた事は一度だってなかったから……。
「分かる訳、ないよね?」
胸がグッと、締められるような気がした。
その問いかけに、答えられる筈がなかった。
ランは、見せた事がない、のではなく。見せられなかったのだ、と、私はずっと気付けなかったのだから……。
何も言えない私に、ランの笑顔が次第に哀しみを帯びた表情に変わっていった。
そして、冷たい言葉が、私の心を貫く。
「……私、あんたの事がずっと嫌いだった!」
予想もしていなかった状況と言葉に、胸が痛むよりも勝ったのは驚きで……。私はただただ、ランを見つめる事しか出来なかった。
「あんたが居なければ、1番傍に居たのは私だったの」
でも。ランから放たれる一言一言を聞いているうちに、ジワジワと胸に広がり始める痛み。
その痛みが、私にこれが現実の出来事である事を告げる。
「例え想いが届かなくても、叶わなくても……。いいと思ってたの……っ」
そして、想いが乗せられた一言一言が、これが紛れもなくランの本心である事も……。