「大丈夫だよ。だって、レノアだもん」

「え?」

「レノアはレノア。大人になっても、心は変わってない。
煌びやかな暮らしの中で簡単に変わっちゃう女の子なら、絶対にツバサが好きになる訳ないもん」

「……姉さん」

その姉さんの言葉は、すごく説得力があると同時に、僕には切なく響いて聞こえた。
叶わないと分かっていながらも、ツバサの事がまだ好きなんだ、って伝わってくる程に……。

「さ!時間勿体ないし、プレゼント探しに行きますか!」

「そうだね」

笑顔で席を立ち、空になったドリンクのコップを片付ける姉さんに続いて僕も立ち上がる。
気の利いた言葉を掛けられない自分に不甲斐なさを感じながらも、普通に、いつも通りにする事が1番だ、って思ってたんだ。

だから、僕は見逃してしまうーー。

「!……ちょっと、ライ!付いて来るつもり?」

「え?ダメ?」

「もうっ、一緒に買っちゃったら明日のお楽しみがなくなっちゃうじゃない!別行動に決まってるでしょっ?」

「あ……。ははっ、そっか!そうだね」

この時に姉さんと別行動した事。
姉さんを一人にしてしまった事を、僕は永遠に後悔する事になるんだ。

「じゃあ、プレゼント買ったらまた連絡するから!」

「了解!じゃ、また後で」

誰よりも彼女の傍に居て、誰よりも彼女の事を分かっていたのに……。この離れてしまった束の間の時間で、彼女は変わってしまうんだ。

……
…………。