好きな人がいます

「くくくっ、何をそんなに驚いた顔してる?」

目を点にして見上げる私を見て、部長は私の髪をくしゃりと撫でる。

「だって、今……」

私のこと、好きって言った?

私は聞き返すこともできなくて、涙に濡れた目をしばたかせる。

「言っとくけど、俺はいくら誘われたからって好きでもない女と毎日食事に行ったりしないぞ?」

えっ?

「それに、いくら社長と区別するためだとしても、好きでもない女を下の名前で呼んだりしない」

だって、みんなが呼んでるから移ったって……

「ただ、俺は君よりひと回りも年上だ。おそらく、君を残して逝くことになると思う。だから、君は俺ではない誰かと一緒になった方が幸せなんじゃないかと思ったんだが……」

そんなこと……

「知ってる? 100歳まで生きる男性もいれば、70歳で亡くなる女性もいるのよ? そんなの、順番通りってわけにはいかないんだからっ!」

そうよ。
部長が100歳まで生きれば何の問題もないんだから。

それを聞いた部長は、くくくっとおかしそうに笑う。

「ああ、全くだ。じゃあ、俺は100歳まで生きないとな」

「そうよ。それに、もし、部長に先立たれたとしても、私は子供と孫に囲まれて幸せな老後を生きるのよ。だから、余計な心配しないで」

私がそう言うと、部長はポケットからハンカチを取り出して、私の涙を拭った。

「じゃあ、寿司屋に行こうか。食べながら、社長にどう切り出すか相談しよう」

「うん!」

嬉しくなった私は、部長のスーツの袖をきゅっと掴む。

私たちは、並んでお寿司屋さんに向かい、ああでもない、こうでもないと作戦会議をするのだった。



─── Fin. ───


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