冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす

嫌な想像ばかりが湧いてくる。すべて可能性でしかないのに、豊さんの冷たい目を思い出すたび、私は求められて彼の妻になるのではないと痛感する。この上、未来まで取り上げられてしまっては耐えられない。

「わかってる。私の我儘よね」
「ううん、ここまで未来ちゃんを育ててきたのは明日海なんだから。ママが子どもと離れたくないって気持ちは、当たり前のことだよ」

藍に慰められ、私は力なくうなずいた。藍の言う通り、真実を豊さんに告げたら、きっと未来の環境は安泰だろう。それなのに言えないのは、私が未来と離れたくないから。
そして、未来をひとりで育てようと決め産んだプライドのようなものだ。

「ねえ、明日海。月に一回は打ち合わせに都内に出るわ。外でランチしながら打ち合わせしようね」
「藍、ありがとう」
「笛吹さんが許してくれるなら、遠出だって計画するわ。取材だってことにしてさ」

藍の頼りになる申し出に、私はようやく笑顔になれた。



藍を見送り、二年暮らした家に別れを告げ、私と未来は電車で都内へ向かった。
私たちの住むところは、天王洲の埋め立て地にあるマンションだった。新築の最上階、二十五階の部屋はいったいいくらする物件なのだろう。想像もつかない。

マンションは外観からして高級感があふれていた。コンシェルジュのいるマンションに入ったのは初めてだ。