冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす

豊さんは奥村フーズとの提携を表面上の目的にしているけれど、実際は望をおびき出したいから私と未来を囲うのだ。
望が出てきて謝罪し、もしかしたら損害賠償などの流れになるかもしれない。ともかく望が見つかれば、私と未来は用済みになるのではなかろうか。

未来にはいくらかけてもいいなんて、言っていたけれど、いつ手のひらを返されるかわからない。そうしたとき、私に少しでも貯蓄があった方がいい。

「ねえ、その笛吹さんに、未来ちゃんのことを言う気はないの?」

藍が遠慮がちに尋ねる。
藍だけは未来の父親を知っている。両親にも作田くんにも言わなかったのは、ふたりが笛吹豊という人を知っているから。そして業務上無関係ではないから。
藍は彼と直接関係がない分、話しても安全だと思ったのだ。

「言うつもりはない、かな。真実を話して疎ましがられるならまだしも、未来を笛吹家の跡取りにって話になると困るもの。……実際、この前も養子になったら笛吹家の人間で、その可能性はあると言っていたし」

あれが作田くんへの牽制の言葉なのはわかる。だけど、未来が実子だとわかれば、あの発言は本当になるかもしれない。

「でも、未来ちゃんにとってはその方が安心して大人になれるかもしれないよ。笛吹さんも、実の娘ならどうしたって可愛がっちゃうでしょう。教育だって、もっと力を入れてくれるかも」
「そのとき、未来は私の娘ではなくなってしまうわね。……笛吹家の人間になって、離婚されたら、私はもう未来とはいられなくなる」