冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす

私と未来の引っ越しは翌週、豊さんと再会してからわずか二週間後だった。
私が決めたのではなく、豊さんの指示だ。実家から出て単身でマンション住まいをしていた彼も、新居に引っ越すという。

いよいよ同居が始まる。
家具や食器の用意はあるそうで、私は衣類や未来のおもちゃなど身の回りのものをまとめるだけ。家具はこの家にもともとあった祖父母のものなので、処分などの手間もなかった。
荷造りと掃除には、藍が駆けつけて手伝ってくれた。目が離せない未来がいるので、正直とても助かった。

引っ越し業者にすべての荷物を託し、がらんとした部屋で藍と缶コーヒーを飲む。

「さみしくなるわね」

藍がぽつりと言った。

「電車で一時間以内よ。そう考えるとこの街って都心部に出やすくていいよね」

私はわざと明るく答える。私もさみしい気持ちなのは間違いなかった。
妊娠中にこの街にきて、藍には何度も助けてもらった。収入の面も、精神的にも。

「仕事は反対されてないんだよね。この先もうちの仕事回しちゃっていいんだよね」
「うん。在宅ならいいみたい。私も自由になるお金はほしいし、少しでもお仕事を回してもらえると助かるよ」

私が仕事を続けることは豊さんには伝えてある。この結婚生活がいつまで続くかわからない以上、微々たるものでもお金を貯めておきたいのだ。